中長期的な中国経済の転換

最近のメディアは、政策金利引き上げや不動産投資への規制など
中国のインフレ抑制についての記事が著しく多い。

ただただ高い経済成長率を追い求めてきた中国の経済構造が、
少しづつ変わろうとしているように見える。

では、具体的に何が変わろうとしているのか。
大きく二点だけ挙げてみようと思う。


まず一点目は、GDPに占める消費の割合である。


中国のGDPは、総固定資本形成いわゆる投資で大きく成り立っている。
リーマン・ショック前はもっと割合が高かったが、
2009年は約45パーセント(先進国は大体20%)が投資である。
それに比べて、個人消費支出(消費)は約35%である。
これは、万が一、不動産バブルがはじけた時は、中国の経済成長率は著しく下がることを
示している。


そのため、中国は消費率の向上を目指した内需型の経済を非常に重要視している


2010年に共産党大会で決定された「第12次5ヵ年計画」(2011年〜2015年)を見ても、
その動きが強く見て取れる。


その動きの一つとして、沿海部は、農民工が都市でも生活しながら働けるように
最低賃金の上昇を少しづつ行っている。
本日も、北京が約2割の最低賃金を上げることが発表された。



二点目は、中国企業の資本コストに対する意識である。

中国の実質利率は人為的に低く抑えられ、中国企業(ほぼ国営企業)は
ほとんどゼロ(マイナスもありうる)に近い資本コストを享受してきた。


そのため、余った資金をそれほど必要のない固定資本に投資し不動産投資の加熱を招いた一因にもなり、
企業において資本コストに対する意識が低かった。


しかし、今年2010年の一月に中国の約130の国営企業にEVA(経済付加価値)を経営指標に導入された。

EVAとは資本コストを考慮した収益性の評価指標であり、超簡単にいえば

EVA=事業からの収益−その事業にかかった資本コスト

である。
中国人民銀行が来年にも政策金利をばんばん上げるだろうし、中長期的に見ても世界的に貯蓄率が減っていくことから資本コストが上昇していくことが予想されている。


中国企業(主に国営企業、大事なことなので2回(ry )はこれまでの規模の経済に頼ってきたずさんな経営から、
効率的な経営が求められるが、それは中長期的に見れば企業が健全な体質になり、
競争力を高められるかもしれない。


以上、中国における経済の変化を二点だけ取り上げてみた。




参考:[富士通総研] 中国の「第12次5ヵ年計画」提案を読む
http://jp.fujitsu.com/group/fri/report/china-research/topics/2010/no-140.html
[WSJ]【コラム】世界の「過剰貯蓄」が終わる日
http://jp.wsj.com/Economy/node_157984
[英FT]上場しても変わらない中国の銀行 資本コストを顧みない国策銀行
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5052
[英FT]Beijing city to raise minimum wage 21%
http://www.ft.com/cms/s/0/30f7f9e0-1277-11e0-b4c8-00144feabdc0,dwp_uuid=9c33700c-4c86-11da-89df-0000779e2340.html#axzz19WNL3kPJ
[MGI]http://www.mckinsey.com/mgi/publications/farewell_cheap_capital/index.asp
グロービスMBA経営辞書 http://kotobank.jp/word/EVA