中国が元高を進めたほうが良い理由

今回は現在の物価高騰という状況から見て、中国が元高を進めた方が良い理由について。


食料・エネルギー価格の高騰によるインフレが世界的に大きな話題になっている。


中国においては、消費者物価指数が2010年に前年比3.3パーセント上昇し、更に今年の2011年一月は前年同期比で5パーセントを超えることが予想されている。
沿海部の都市である深センや上海などの物価が上昇しすぎて、香港との物価が逆転し、香港への日用品の買い物が殺到するケースが出てきている程である。
以下のグラフから見るように、中国の消費バスケット構成には、食料とエネルギーが大きな割合を占めているため、消費者にとってそれらの高騰は、生活に大きな影響を与えることがわかる。そして、食料とエネルギーの国内自給率が高いことも特徴である。

食料価格に関しては、経済成長により需給均衡価格が高まったことに加え、干ばつや寒害などの天候不良が重なり、高騰が加速した。
また、中国の場合、小売にたどり着くまでの輸送プロセスの中で食料の価格がどんどん釣り上げられていたり、買い占めが起こっていたりという要因もあるようだ。


また、エネルギー価格の面では、中国の場合、一次エネルギー構成比の約8割を占める石炭の価格が重要になる。
石炭を含む燃料価格が2010年の間に約2割上昇し、発電コストが大幅に上昇したが、政府が電力価格を固定させることで対応している。
(高い石炭を電力会社が買いたくないがために、備蓄を低水準まで使いきってしまい、一部で供給停止などの悪影響は出ている)


このようなインフレに対して、中国は政策金利上昇、預金準備率引き上げの金融政策を行っている。


この金融政策は景気の加熱を抑え、物価を下げることに影響を及ぼすがもう一つメリットがあると考える。
それは、人民元の上昇である。
政策金利引き上げは、人民元の上昇圧力を高める。


人民元の上昇によるメリットは、以下のようなものがある。


人民元の上昇によって、消費者の購買力上昇
・購買力上昇による外資企業の対外直接投資増(原料調達コスト減から)
中国企業のM&A拡大


しかし、もちろん中国から海外へ輸出する外資系企業の投資を減少させるなどデメリットもある。
2010年の6月に人民元を弾力化させることを発表したが、それまでなかなか進まなかったのは、輸出を行う外資系企業で成長している都市部の地方政府の利権が強いからであると思われる。


少し極論気味ではあるけれど、中国が内需主導型による成長を目指し、中国が都市部だけでなく全体での成長を重視していくのであれば中国が元高を進めていくのは合理的に思える。


参考
The Economist "Central planning takes a black eye"
The Economist"Back with a vengeance"