中国の消費者物価指数は正確なのか

中国の今年度1月の消費者物価指数(以下、CPI)が発表されました。
前回の記事でも少し触れたように、5%を上回ると予測されていたのですが、実際には4.9%と予測よりも低く出ました。

しかし、この中国国家統計局が発表したCPI数値に対して、各国から疑いの声がかけられています。
CPIは以下のような式から算出されるため、ウェイト(消費バスケット)が定期的に更新され、中国の場合、五年に一度の更新が今回でした。
出典:総務省統計局

ちなみに、日本もこのウェイトを更新する頻度は五年であり、米国は二年、英国は毎年など国によってまちまちです。

以下の表が、今回の中国CPI算出におけるウェイトの変更を表したものです。

食料のウェイトが2.2%引き下げられ、住居が4.2%引き上げられています。
エンゲル係数は国民の所得上昇とともに下がるので正しいという意見もありますが、明らかに生活実感より乖離しすぎているという声が多数派のようです。

このようなことが起こった要因としての候補は、主に二点挙げられると思います。
一点目は、サブカテゴリーの変更です。
価格の調査対象である代表的な財(食料だと小麦、米、大豆など)、いわゆるサブカテゴリーの変更によってCPIが低く算出される可能性があります。
それに加え、サブカテゴリーのウェイトも変更されている可能性が高いとゴールドマン・サックスのYu Song氏とHelen Qiao氏は言っているようです。

二点目は家計支出調査によるバイアスです。
ウェイトを決める際に、国民の家計支出調査を行いますが、中国のように所得格差が大きい国では、このサンプリングによって大きく異なる結果になると思われます。

中国が意図的にインフレ率が抑えられるように統計の算出を行ったのは定かではありませんが、統計は作る側にとっては案外操作しやすいということを思い出させてくれる事例でした。


参考:
The Economist "Infration revisionalism"
Reuters "China's inflation overhaul clouded by data doubts"
「日本の消費者物価指数の諸特性と金融政策運営」著梅田雅信